東川スタイル―人口8000人のまちが共創する未来の価値基準 (まちづくりトラベルガイド)【書評】いろんなことを考えることができる一冊!
東川町という町
東川町という町をご存知でしょうか?
北海道のほぼ中央に位置し、旭川空港から車で5分、旭川市の中心部から13km(車で約15分)という立地にある街です。
園風景が美しく、北海道で初めて景観行政団体に指定されているなど、「大自然と共生する町」として近年注目を集めている街です。
人口減少、過疎化といった問題を抱える地方の自治体が多い中、移住者、観光客が増加していて、20年で住人が14%増加しています。
といっても、現在8,000人位の小さい町で、過剰に人を集めるのではなくて、過疎ではなく適当にまばらな感じという意味の「適疎」を実現している街です。
住民のライフスタイル
よくあるまちづくりの成功事例のように行政だけが主導しているのではなくて、住人が自分たちの生活を楽しむためにしたいことをしています。
田園風景が広がる田舎ですが、オシャレなカフェやパン屋、セレクトショップ等が点在しています。
そして経営者が自分たちのライフを重視しているので、週3日だけの営業だったり、限られた席数しか設けていなかったりします。
例えば、自身が生産されている「大雪なたまご」を使ったトロトロのオムライスが人気の「ファーマーズカフェ 風土」は、客席数が11席。それだけなら、普通の小さい店ですが、この店4名以上で座れる席はあえてつくらないようです。どうしても4名以上で座りたいお客さんには、東川のほかの飲食店を紹介したりするらしい。お客さんにびっくりされることもあるそうです(笑)
ここまでくると、徹底したこだわりですよね。
行政の取り組み
行政もいろんな取り組みをしています。
言ってはいけない3つの”ない”
東川町役場のルールとして、ユニークなのが、言ってはいけない3つの”ない” というものがあります。
それは、『1. 予算がない 2. 前例がない 3.他でやってない』 というものです。
できない理由を探さず、できる理由を考えるということですよね。
電話応対
電話に出るときには、職員は『写真の町・東川町』と言って出ます。
電話をかけていただいた相手への認知と、職員の認識のために行っています。
(この町は、写真甲子園というものを毎年開催しています。)
受け身姿勢からの転換
国の助成金から考えるという発想ではなく、 国から資金調達するという発想を促します。
これによって、陥ってしまいがちな行政の受け身姿勢からの脱出を図っています。
組織体制
課の下には “〇〇係”ではなくて ”〇〇室”を設置。
これは、対外的な交渉に役立ったり、職員の仕事への誇りも醸成するためです。
ちょっとしたことですが、確かに〇〇室の方が響きもよく、肩書きも係長よりも室長の方が重みがありますよね。
これらの事は、会社組織でもとても参考になることです。
君の椅子
子どもに居場所を贈りたい。そんな想いで始まった事業。
木工の盛んな町であり、この町で生まれた子供には生まれたときに、役場からオリジナルの木製の椅子がプレゼントされるという取り組みです。
新・婚姻届/新・出生届
通常は役場に提出するだけで終わる届出書類。
しかし、結ばれた2人にとって、大切な瞬間の記憶を留めているもの。カタチを残す方法はないか。そんな発想から生まれた記念品のサービス。婚姻届の複写をフォルダに入れて渡します。出生届も同様のサービスを行っています。
確かに、僕は婚姻届なんてコピーもとってないし、何も残っていません。
出生届は、出す前にコピーしたはずですが、どこに行ったやら。
紆余曲折を経たであろうまちづくり
こういったまちづくりは、聞くと簡単にできたように思えてしまったりしますが、決してそうではなく、一朝一夕で実現するものではないと思います。
例えば、写真の町というコンセプトも、反対意見も随分あったようです。
景観豊かな北海道だからとか、旭川近くで立地もいいからとかだけではなく、まちの「あるべき姿」や価値を住人・移住者皆で共有したまちづくりが実を結んだ事例が東川という町です。
いろんな読み方ができる本
この街をカラフルな写真とともに紹介した『東川スタイル』
サブタイトルは「人工8000人のまちが協創する未来の価値基準」
まちづくりやライフスタイルの指針となるような事例がたくさん紹介されています。
北海道自体、僕は行ったことがなくて、とにかく一度行ってみたいと思っているのですが、東川町にも行ってみたくなりました。
実際に東川町へ足を運びたくなる、そんな1冊です。
そして
自分が望む生活とはどんなものか?
どこに住み、誰と過ごし、何をして、どのように生きたいか?
それは、本当に自由で
一人ひとりが、自分らしく、自分のしたいように、生きていい。
そんなことを考えさせられました。
まちづくりのコンセプト、行政のあり方、個人の生き方、トラベルガイド、等々
この本は、人によって、いろんな目的で読める一冊です。
興味のある方は、ぜひ手にとってみてください。
東川スタイル―人口8000人のまちが共創する未来の価値基準 (まちづくりトラベルガイド)
産学社
売り上げランキング: 37,863